モロッコ ダデス渓谷・トドラ渓谷 2001.02.01 - 2001.02.04

にせガイドにやられる

ワルザザートからバスで東に数時間行くと、赤褐色の崖が切り立つタデス渓谷とトドラ渓谷への入り口の町、ブルマン・ド・ダデスとティネリールへたどり着く。それぞれの町から渓谷までは、ミニバンの乗合タクシーが走っている。この乗合タクシーは、満員になると出発する。ミニバンの乗合タクシーの値段は、だいたい15キロまでが5DH、16キロから25キロが10DH、25キロ以上が15DHである。

にせガイド登場

ワルザザートから東に150キロに位置するブルマン・ド・ダデスは、タデス渓谷への入り口の町である。この町で始めて、モロッコで悪名高いにせガイドのひとりに遭遇した。

ワルザザートからのバスを降り、私たちはしつこい客引き達から逃げて、インターネットカフェに入り込んだ。このインターネットカフェで、私たちがその日泊まろうと思っていたホテルの従業員と名乗る男、アブドゥールに”偶然”出会った。ホテルの人なら安心だと思い、警戒心がすっかり消えてしまった私たちは、アブドゥールに次の日のダデス渓谷への交通手段の確保を相談した。ダデス渓谷までの行き方は私たちのガイドブックには詳しく書いてなく、アブドゥールに安いバス等は走っていないと言われた時には、その話を鵜呑みにしてしまった。ガイド付のトレッキングをアレンジするのが一番と言われたが、そこまでお金を出したくないので、交通手段だけ確保してもらうことにした。タクシーを一日で貸しきると800DHと言われたが、それはちょっと高いので、半日で300DHまで値下げしてもらい、デポジットの100DHをその日タクシーの運転手に渡した。

その日の夜、同じくアブドゥールに紹介されたまずいレストランで夕食を済ませた後、ホテルに戻ってホテルのオーナー達と話していると、ダデス渓谷へは安い乗合タクシーが走っていることと、アブドゥールはホテルの従業員ではなく、明日彼の紹介されたタクシーで行ったら、土産物屋やカーペット屋に連れて行かれて、ダデス渓谷を見る時間はほとんどない可能性があることを教えられた。もし、自分達で乗合タクシーを使って行きたいなら、アブドゥールには100DHを返してもらえないなら警察へ行くと言えばいいとアドバイスもしてくれた。

その夜は悔しくてなかなか寝付けず、どうやったら100DHを返してもらえるかと思案した。もし100DHなんかもらっていないと言われたらどうしよう。とりあえず、デジカメの15秒の動画を利用して、彼が100DH昨日支払ったことを認める所を録音した後に返してほしいと言えばよいかな、などといろいろと考えた。

次の日の朝、約束の時間に受け付けに降ると、もうすでにアブドゥールとアブドゥールの友人とタクシーの運転手が来ており、前の日の夜いろいろとアドバイスをくれたホテルのオーナーの友人とお茶を飲んでいた。私は証拠を録音する為、緊張しながらテーブルに近づくと、アブドゥールの顔からは昨日までのにこにことした表情は消えており、気難しい顔で話はじめた。

「ちょっと今日の朝話を聞いたのですが、どうやらあなたたちはもっと安い乗合タクシーで行きたいとか。昨日のデポジットの100DHは、私の財布から個人的に出します。タクシーの運転手は朝7時から待っているので(嘘ばっかり)彼から100DHを返してもらうわけにはいかないので。」

後からオーナーの友人に話を聞いてみた。彼はアブドゥールに私たちは残りの200DHを払うかもしれないが、もしかしたら怒って警察に行くかもしれないよと話をしておいてくれたようだ。モロッコでは、きちんとした免許を持っていないモロッコ人が観光客とビジネスすると処罰され、3ヶ月から12ヶ月牢屋に監禁されるおそれがある為、無免許のにせガイド達は警察につかまるのが一番怖いようだ。

私たちは、乗合タクシーに乗り、一番きれいな辺りで降ろしてもらい数キロ道路沿いに歩いたあと、次にきた乗合タクシーで帰ることにした。最初に止まってくれたのは、二人の日本人観光客が乗った5人乗り(モロッコでは7人乗せる)のタクシーだった。彼らも私たちと同じく、トドラ渓谷へ向かうので乗せていってくれると言われたが、私たちはトドラ渓谷へ向かう前に、ブルマン・ド・ダデスのインターネットカフェへ寄りたかったので、ブルマン・ド・ダデスで降ろしてもらい、その日の夜会う約束をして分かれた。

トドラ渓谷

ブルマン・ド・ダデスからバスで、トドラ渓谷への入り口の町ティネリールへ向かった。ティネリールでミニバンの乗合タクシーを見つけて待っている間、二人の若者が乗り込みメルズーガへのらくだツアーの売り込みを始めた。リコメンデーションノートには、日本人観光客が書き込んだ感謝の言葉がいろいろと並んでいたが、今まで調べた値段と比べてもかなり割高だし、ここまで自分たちの力できたのだから、ツアーには入らず自分たちのペースでメルズーガへ行きたかった。しかし彼らは負けない。エルフードからメルズーガへのバスは走ってないとか、走っていても600DHするから、僕たちのツアーは割安だとか嘘ばっかり並べ立てて営業にはげむ。ガイドブックさえ持っていれば嘘だとすぐわかる事をいう人々に多くめぐり合ったが、観光客はそこまでばかだと思っているのだろうか。

ようやくトドラ渓谷へたどり着いた時にはもう真っ暗になっていた。トドラ渓谷には2種類の宿がある。乗合タクシーの終点近くに数軒並ぶ宿は、二人部屋60DH(約660円、シャワー・トイレ共同)の安宿で、バス停から川沿いに歩いて15分くらいの所には、二人部屋150DH(約1650円、ホットシャワー・トイレ・朝食付)のホテルが2軒ある。私たちは、そのロケーションの良さと設備のすばらしさに感激して、奮発して二人で150DHのHotel Les Rochesに泊まることにした。

到着した日は暗闇の中を歩いていったので、翌日の朝の渓谷の景色のすばらしさには感動した。ホテルの両側を300メートル程の赤褐色の崖がそびえ立っている。朝日を浴びて壁がばら色に変わっていた。トドラ渓谷に来るまで知らなかったのだが、ここはロッククライマーの間では有名な所らしい。もうすこしゆっくりして渓谷内を歩き回る予定でいたが、2泊目の夜に私たちの次の目的地メルズーガから遊びに来ていた人が、翌日帰る時に私たちを乗せていってくれるという話になり、予定をはやめて彼と彼の友人たちと一緒にメルズーガまで行くことにした。


ダデス渓谷

ダデス渓谷(トドラ渓谷も同じく)へは、こういうミニバンの乗合タクシーが走っている。ミニバンが満員になると出発する。

私たちの乗ったミニバンには、ジラバ(フード付きのマント)を着た人々がいっぱい。まるでスターウォーズの世界のよう。

ブルマン・ド・ダデスからの道は、ダデス渓谷の間をくねくねと登っていく。
トドラ渓谷

世界中からロッククライマーが集まってくるトドラ渓谷は、朝の光を受けて緋色に染まる朝方が一番美しい。

途中で出会った日本人旅行者二人と、トドラ渓谷をハイキングした。

家畜の餌を山ほど背負って降りてくる女性。写真撮らせるから、5DHくれと皆に言われた。

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