ケニヤ ケニヤ山国立公園 2001.03.06 - 2001.03.10

ケニヤ山登頂
(4,985メートル・16,355フィート)

ケニヤ山はケニヤ国内での最高峰、アフリカ大陸ではキリマンジャロに次いで第2の最高峰である。山好きの観光客数人から、ケニヤ山のすばらしさを聞き、タンザニアからナイロビへ戻った後さっそく挑戦してみることにした。ケニヤ山の最高地点(Batian: 5199メートル)と第2の最高地点(Nelion:5188メートル)は、ロッククライマーとアイスクライマーのみがたどり着くことが出来る。普通の登山客が訪れることが出来るのは第3の峰Point Lenanaである。

出だしから不調

出たとこ勝負で全てうまく事が運んだタンザニアと比べて、ケニヤではどうも私たちの運は悪かった。出だしの不調はナイロビで Planet Safari Adventure (ロンリープラネット社のガイドブックにも薦められているのに)という旅行会社の人にいくつかの嘘をつかれたことから始まった。

まず第一の嘘はPlanet Safari Adventure のオフィスの女性が、最近国立公園の規則が変更になり、ケニヤ山に登るには必ずガイドが一緒でないと登れなくなったと言ったことである。そして都合よくPlanet Safari ではガイド付のケニヤ山5日間フルパッケージツアーがあり、ひとりUS$250で出来ますと薦められたのだった。後で知ったことだが、実際には単独で山に入る事が禁止されただけで、二人で登ればガイドやポーターなしでも登れるのだ。

第二の嘘は同じくPlanet Safari Adventureに勤める別の客引きの人から、Joseph Kanyai MutheeといガイドのことをPlanet Safari Adventureが使う信頼出来るガイドとして紹介されたことだった。実際にはこのガイドは観光客から数々の苦情が出ており、現在はPlanet Safari Adventureでは使うことがないということが後で分かった。

ナイロビでは、宿の人等から町では誰も信用しないように言い渡された。観光客を狙ったスリや強盗も多く、貴重品だけでなく着ているもの全て盗む人々がいる。また、外を歩くときに腕時計をしないようにとか、夜町を歩くのは危険だから近い距離でもタクシーを使うようにと言わた。登山の情報を集めてもいったいどの情報が正しいのか、誰の言うことを信頼すれば良いのかを判断するのは至難の技である。

キリマンジャロの山小屋で出会った日本人の男性から、いくつもあるケニヤ山の登山ルートの中から一番お勧めのルートを教えてもらった。それはシリモン・ルートで登り、チゴリア・ルートで降りるルートである。また彼と同じルートをガイドなしで登ろうとした一人旅の日本人観光客が、国立公園職員から町に戻ってガイドかポーターを雇うよう言われたことも聞いた。これが先ほどの第一の嘘を信じる背景となった。このお勧めルートをなるべく自分たちの力で出来るだけやろうと決め、ナイロビでケニヤ山の地図と食料を購入し、キャンプ用品をレンタルしたところまでは順調にいった。しかし、ここから私たちの運に陰りが出始めた。まずシリモン・ルートの開始点であるナンユキ行きのバスのスケジュールを調べにバス会社へ行くと、「うちのバス会社ではナンユキには行かなくなりました」と言われた。次に山小屋の予約をしに、ガイドブックに載っていたLet's Go Travel へ行くと、「その山小屋はうちでは予約できません。どこが所有しているのかも分かりません」と言われた。私はとりあえずナンユキまで乗合タクシーで行き、そこで情報を得るのが一番だと思ったのだが、ウェスはあと一箇所Mountain Maddness というツアー会社の値段を調べてみようと提案した。このツアー会社へ行ったのがそもそもの間違いの始まりだった。ツアー会社の値段は案の定かなり割高で自分たちでナンユキへ行き、そこでガイドかポーターを雇うのが一番という結論になった。しかし、このツアー会社へ行ったことで、私たちがケニヤ山へ行こうとしているということが町の客引きたちに分かってしまったのだ。

一度ホテルに戻り、私がコンピューターを使っている間に、ウェスが乗合タクシーの場所と値段を確認しに出かけた。しかし、ホテルの前ではケニヤ山のガイド、Joseph Kanyai Mutheeが待ち構えていたのだ。会社を通さずに直接彼を雇えばかなり割引してくれるという。ウェスは約一時間くらい交渉をして、お金は全て私たちが管理して経費は私たちが直接払うこと、1000シリングを前払いで残りは登山が終わったときに払うことで話をつけ、ホテルで待つ私に相談にきた。値段自体は悪くない金額だったので、直接ジョセフに会ってみることにした。私のジョセフに対する第一印象は全然良くなかったが、ウェスは1時間も話し合って大丈夫と思ったのだからたかが数分の印象で決め付けてはいけないと思い、「この人とは行きたくない」とは言わなかった。これが第2の間違いであった。とにかくナンユキに着くまで前金は払わないようにとウェスに伝えてホテルに戻った。しかし私がいなくなった後、ジョセフに懇願されてウェスは私に内緒で1000シリングの前金を支払ってしまったのだった。そして次の日の朝ジョセフと一緒に乗合タクシーでナンユキの町へ行くと、宿にチェックインした途端にジョセフから「準備の為にあと1000シリング必要」と言われたのだった。この時点で私はもうこの人をガイドとして雇えるほどの信頼は絶対できないと気が付き、1000シリングは棒に振るとしてもジョセフを首にして別のガイドを雇うことに決めた。5000メートルの山の上では何が起こるか分からない。そんな所で信用できないガイドと一緒に山を登ることは絶対に避けたいと判断したのだ。

ナンユキでガイド・ポーターを雇うにはいくつかのオプションがある。まず一番信頼できて料金も一番高いのが、Mountain Rock Lodge (メール: mtnrock@form-net.com, 電話番号: +254-(0)176-62625)。海外からの申し込みも出来るし、ガイドブック等でも紹介されている。今回の登山中出会ったガイドで一番プロフェッショナルでガイドはこの Mountain Rock Lodge から派遣されていたガイドだった。問題はMountain Rock Lodge がナンユキの町から10キロほど離れたところにあるので、現地についてから話を聞こうと思うとタクシー等で行かなくてはいけないのが不便。町の中には同じ系列の Mountain Rock Cafeteria があるのでそこで電話を借りられるかもしれない。私がMountain Rock Cafeteria に行ってケニヤ山のガイドを探していると言った時、なぜかウェイターに連れてこられたのが数軒先にあるWild Side Ventures (メール: gmc@swiftkenya.com, 電話番号: +254-(0)176-32236)である。代表のCaptain Joe はガイドとして長年の経験があり、会社としては新しいが街中でうろうろしているフリーランスガイドを雇うよりは安心できそうであった。ガイドのみを雇った場合、Mountain Rock Lodge は一日あたりUS$17、Wild Side Venture は一日あたりUS$12がその日言われた値段であった。そして一番安くて質がまちまちなのが、ナンユキの町についたとたんにあちこちから声をかけてくるフリーランスのガイド達だ。その日に言われたレートは一日あたり500シリング(約US$6.5)である。私たちはとりあえず国立公園に入れるためだけに正規のガイドが必要なので、一番安いフリーランスのジョンストンを選んだ。

ジョンストンは安いだけあり、自分の仕事に対するプロ意識が低く、顧客の満足度よりも偶然同じ宿に泊まっている他のグループのポーター達とおしゃべりする方にエネルギーを傾けていた。タンザニアのメル山やキリマンジャロ登山で出会ったガイド達はこちらが関心する程、プロ意識が徹底していたので、それから比べてジョンストンのレベルの低さは驚きであった。やはりお金をけちるとそれだけのものしか手に入らないのであろうか。しかし、私が高山病になった時には助けてくれたし、暗闇の中ウェスに頂上までの道案内をしてくれたのでそれなりに役に立ったことは付け加えておかなくてはいけない。登山道はきちんとした標識がなく途中道を間違えて迷子になった登山客にも会ったので、彼の道案内があり助かったとも言える。

ケニヤ山登頂(シリモン・ルート)

どのルートで登ってもケニヤ山の登頂にはたいてい4日間かかる。しかし頂上近辺を一周するサミットサーキットを歩く為に1日余分に日程を組む人も多い。私達も5日間の予定でシリモン・ルートを登り、チゴリア・ルートを下る予定でいたが、私が高山病にかかった為予定を変更して一日早くシリモン・ルートを下った。

第1日目:ナンユキの町から国立公園のゲート(2600メートル)までは32キロあり、ジープで約1時間かかった。ゲートから1泊目の宿オールドモーゼス小屋(3300メートル)まではなだらかな9キロの道なり。

第2日目:シプトン小屋(4200メートル)までは何度も登り下りを繰り返す14.5キロの道を歩く。中間地点から頂上の峰々が見渡せる。この日の景色は始まりから終わりまで本当にきれいで歩いていても飽きない。またシプトン小屋は5000メートル級の峰々のすぐ目の前の理想的な場所にある。午後遅くに体慣らしに4500メートル位まで登ったら私の体の調子が悪くなった。下る途中で体全体から血の気が引いて、手がしびれる感覚がだんだんひどくなり、いまにも気を失いそうな感じがした。出来るだけ早く小屋まで降りたがその日の夜は一晩中具合が悪くて、次の日もとても登れる状況ではなかった。

第3日目:ポイント・レナナ(4985メートル)までは比較的簡単な約2時間半の登りだ。私は高山病でとても登れる状態ではなかったので、ウェスとガイドのジョンストンは午前4時に出発して日の出の前に頂上に到着した。予定では頂上から約6時間かけてサミット・サーキットを一周してまたシプトン小屋に一泊する予定だったが、ウェス達は私の具合が悪いのでサミット・サーキットの一部を約2時間歩いてシプトン小屋に戻った。私は相変わらず頭痛と吐き気がひどかったのでその日のうちにオールドモーゼス小屋まで下ることにした。私の荷物はウェスとジョンストンが分担して持ってくれた。オールドモーゼス小屋近くまで下りるとようやく気分が大分良くなり、その日はオールドモーゼス小屋に1泊した。

第4日目:ゲートまでは約2時間の快適な散歩道。その日たまたま一緒に降りた観光客を迎えにきたドライバーにこっそり1000シリングのチップを渡すことでナンユキまでの交通手段も確保が出来た。

ケニヤ山登頂:ビジターの為の情報

登山前に国立公園入り口の管理事務所で国立公園入場料を支払う。また国立公園の入り口にはお店がないので食料やキャンプ用品は前もって手配しておく必要がある。山小屋はそれぞれの管理する事務所で前払いをすると割り引かれた値段で宿泊できるが、当日山小屋で払うとかなり割高である(詳しい値段は以下の山小屋の項目を参照)上に満室になった場合は泊まれる保証はないそうである。

登山時に特に注意しなくてはいけない事は、寒さから身を守ること、過度の紫外線から皮膚を守ること(300メートル高度が上がると紫外線の量が30%増えるといわれる)、充分な飲み水を確保することだ。また、高山病の恐れもある。綿製品を身につけないことも大切である。汗を吸い取った綿は、気温が下がった時に、体の温度を急激に下げてしまう恐れがある。

キャンプ

山小屋の近くでキャンプをするには、山小屋を経営するそれぞれのロッジ等にキャンプ代を支払う。山小屋から離れた場所にキャンプする時は、国立公園に一人一晩US$2のキャンプ代を払う。山小屋の敷地がどこまでなのかは、山小屋に常駐する管理人に聞くと良い。

山小屋

シリモン・ルート:この登山道にあるオールドモーゼス小屋とシプトン小屋はナンユキにあるマウンテン・ロック・ロッジが経営する。(email: mtnrock@form-net.com, 電話: +254-(0)176-62625)。この二つの山小屋にはマットレス付きの2段ベッド、テーブル、椅子、トイレ、水道がある。山小屋の予約と支払いは、ナンユキの町から12キロ南にあるマウンテン・ロック・ロッジか、ナンユキの町にあるMt. Kenya Cyber Worldにて出来る。一人あたりの一泊の宿泊料は、オールドモーゼス小屋が前払いで400シリング、当日山小屋で払うと650シリング、シップトン小屋が前払いで500シリング、当日山小屋で払うと800シリングである。もうひとつのリキ・ノース小屋はMountain Club of Kenya (ナイロビの電話番号: +254-(0)2-501747)が経営する。

チゴリア・ルート:国立公園のチゴリア門のすぐ外側にあるメル・マウント・ケニヤ・ロッジはLets Go Travel (email: info@letsgosafari.com、ナイロビの電話番号: +254-(0)2-213033、ホームページ: http://www.letsgosafari.com)が経営する。料金は宿泊料が一人一泊1050シリング、電気代が50シリング。食料は自分で持ち込む。国立公園内にあるミントス小屋はMountain Club of Kenya (ナイロビの電話番号: +254-(0)2-501747)が経営する。

ナロムル・ルート:この登山道にあるMeteorological Stationとマッキンダーズ小屋はナロムル・リバー・ロッジ(ナロムルの電話番号:+254-(0)176-62201)が経営する。

サミットサーキット:ケニヤ山の詳細地図には3つの山小屋が載っているがその内二つは立て壊され、唯一残っているのはオーストリアン小屋のみである。この小屋の状態もあまり良くなく、しかもマッキンダーズ小屋やシプトン小屋から頂上までは比較的短時間で到着できるため、ここに泊まる必要はない。現在Mountain Club of Kenyaはオーストリアン小屋の権利をKenya Wildlife Serviceに売却する計画をしている。

経費一覧

経費

費用詳細と手段

支出

ジョセフ・カナイへの支払い 前金:KSh 1000、タクシー:KSh 320、ガム:KSh 20

KSh 1340

ナイロビからナンユキへ乗合タクシー KSh 320 * 2 人

KSh 640

ナンユキでの一泊:Joskaki Hotel 朝食付二人部屋

KSh 750

国立公園入場料 KSh 780 * 4 日 * 2 人

KSh 6240

山小屋利用料 (KSh 400 * 1 オールドモーゼス * 2 人) + (KSh 500 * 2 シプトン * 2 人)

KSh 2800

ナンユキから国立公園入り口までの交通費  

KSh 2000

ガイド料 KSh 500 * 5 日

KSh 2500

チゴリアからナンユキまでのガイド用交通費 ルートを変更したので必要なかったが払った

KSh 300

公園入り口からナンユキまでの交通費

KSh 1000

登山終了後ナンユキでガイドと一緒に昼ご飯  

KSh 500

チップ

KSh 2000

ナンユキからナイロビへ乗合タクシー (KSh 320 * 2 人) + ホテルまで:KSh 100 

KSh 740

合計  レート:1KSH = 0.012937円

KSh 20,810


ケニヤ山国立公園

シプトン小屋前のテントと、ケニヤ山の峰々。一番左のやや丸い形をしているのが、一般登山客が目指すポイント・レナナ。

シプトン小屋近くの斜面から見た、ケニヤ山の峰々。独特の高山植物がケニヤ山の美しさを引き立たせる。

標高4300メートル辺りで見つけた、ふわふわした私の新しいお友達。

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