イタリア ドロミテ・カラルゾその2 2001.07.01 - 2001.07.04

ロンガローネの悲劇

去年の秋に予約を入れている、フランスに向かうまであと5日間が残っている。予定では、友人に薦められた海辺の村々、シンケ・テレに滞在するつもりでいたが、ドロミテの山の美しさに惹かれてシンケ・テレには2日間だけ滞在して、残りをドロミテで過ごす事にした。

数日前に滞在した、日本語の話せるイタリア女性リサさんのB&Bに戻ると、彼女は丁度1週間の休暇が始まった所だった。一緒にリサさんのお気に入りの山小屋に行って一泊することにした。この山小屋はロンガローネという村のすぐ近くにあるが、このロンガローネには約30年前に恐ろしい事件が起こっている。

ロンガローネの町の近くに、世界で一番標高の高いダムが建設された。しかし建築後すぐに周りの山が少しづつ崩れてきて、村の人々はこの山が崩れる音に不安で政府に何度も訴えたが、誰も村人たちの話に耳を傾ける人はいなかった。そしてある夜、ダムのすぐ横の山の一部がいっぺんに崩れ落ちて、ダムの水の中に入り込み、押し出された水がダムの下の谷に一度に流れ出したのだった。この時の洪水により、谷間の村のいくつかが水の下に水没し、2500人程の人が亡くなったという話だ。皮肉なことに、ダムの壁はびくともせず今も見事に残っている。そしてダムの建築が始まる前に雇われたドイツ人地質学者は、実際に崩れ落ちた部分を前もって予測して、ダムを建築したら山が崩れ落ちると警告したのにもかかわらず、ダムは建てられてしまったのだった。欲に目がくらんで、自然をばかにした結果は、信じられないスケールの悲劇となってしまった。


ドロミテ

カラルゾのB&B経営者リサさんの一番のお気に入りのCasera Ditta小屋。歩いて1時間でたどり着けるが、景色はとってもきれいである。

トレチメとはイタリア語で三つの峰という意味。漢字の山のごとくそびえ立っていた。リサさんに教えてもらわなかったら、来る事もなかった所だが、世界中で有名な所らしい。一番右には、ロッククライマーが登っていた。トレチメを見ながら一周する登山道は比較的簡単なため、多くの登山客が訪れていた。

トレチメ(三つ峰)へ行く途中の景色。数日前に訪れた時にもドロミテの景色の美しさに驚いたが、ここトレチメへたどり着くまでも、美しい自然に迎えられた。

同じくトレチメ(三つ峰)へ行く途中の景色。昼寝やピクニックに最適な場所。雪を抱えてそびえたつ山々と青い空の元で、緑の草がやさしく人々を呼んでいる。

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