フランス ペリゴー地方 2000.11.19 - 2000.11.25

ラスコー洞窟近くで半冬眠

ラスコー洞窟があるペリゴー地域は、ラスコー以外にも有史以前の人々が書いた壁画が残る、数多くの洞窟が発見されている。しかし、過去1万7千年から1万2千年の間見事な状態で保存されていた壁画が、人が洞窟に入ることでどんどん破壊されている事から、今はほとんどが一般に公開されていない。

ラスコー洞窟が1940年に4人のティーンエイジャーに発見された時には、壁画は完璧な保存状態であったが、1948年に一般公開されだしてから、人間の吐く息等によりあざやかな色がどんどん褪せてきたり、緑色のかびが壁画を覆いだした為、15年後に閉鎖された。現在は一日5人のみが入場を許されており、ラスコー洞窟の壁画を見るための待ち時間は2年位と言われている。

でも、どうしても見たいという人達の為に、ラスコーIIというオリジナルの壁画を見事に複製した壁画を見れる洞窟がある。ラスコーIIでは、1万7千年から1万5千年前に書かれたと見積もられている壁画の、すばらしいまでの躍動感や色使いを垣間見れるが、しかしどうしてもこれは偽者でしかないという考えが浮かばずにはいられなかった。ツアーもフランス語のみだったので、絵を見て想像するしかなかった。

私たちはラスコー洞窟近くにある、本物の壁画を見れる洞窟の方が勉強になり、また感激した。以下の洞窟は、一日に入場できる人数が決まっているので、前もって予約したほうが良い。電話番号はどちらも 05 53 06 86 00 (海外からは +33 5 53 06 86 00)である。ガイドブックは、夏は数日前から1週間前に予約をいれることを薦めている。

訪れた洞窟のひとつは、1万4千年前から1万2千年前の壁画のある Cambarelles 洞窟である。私達が訪れた冷たい雨の降る11月後半の朝は人がいなくて、英語が話せるガイドの人と私たちだけの個人ツアーとなり、前日に訪れたラスコーよりもずいぶん勉強になった。ここの壁画は、氷河時代の終わりに洞窟が水で満たされた為、色がほとんどとられてしまったが、トナカイ・野牛・馬などの動物や人間の絵が壁に彫刻されており、今でも充分認識出来る。一般公開されているのは250メートルほどで、懐中電灯とレーザービームをもったガイドの人が、主な絵の所で立ち止まり何が書かれているのかを解説してくれる。不思議なことに、最初は彫られた線を見ただけではいったい何が書かれているのか分からなかったが、「ここが頭で、ここが角で、ここが足で」という風に解説してもらっているうちに、まったく意味を持たなかった線の連続が、突然エネルギー溢れる動物の絵へと変わっていくのは不思議な経験だった。ごくわずかある人間の絵は、動物よりも何を示しているのかが分かりにくい。ガイドさんによると、例えば女性を表す絵は必ず体を折り曲げた格好で書かれており、まったく同じ絵がドイツ・チェコ・ウクライナ等でも見られ、そこから女性であることを判断出来たという。

もうひとつ訪れたのは、1万4千年前にクロマニオン人に描かれた多彩色の壁画を見ることが出来る Font de Gaume 洞窟である。この洞窟では230位のすばらしく洗練された、水牛・トナカイ・馬・熊・マンモス・雌ライオン・サイなどの動物や人間の手などの壁画のうち30位を見ることが出来る。ここのガイドさんは残念ながら英語がしゃべれなかったが、客が4人しかいなかった為、ウェスでも分かる位のやさしいフランス語でゆっくりと説明をしてくれたのでとても助かった。洞窟の壁の形を利用して描かれた水牛や、今にも動き出しそうな馬を見ていると、これが1万4千年前の人間による作品だということが信じがたい。おもしろかったのは、動物は極めて現実的に描かれているのに、人間はとても象徴的に描かれていた事だ。ガイドさんによると、こんなに昔の人は動物の躍動感を描く技術があったのに、その後人間はその技術を失い、もう一度技術を習い直すまでに随分長い時間がかかったそうだ。

他にもペリゴー地域で一般公開されている洞窟は全部で7つあるそうだ。

しかしここのところ毎日寒くて、雨がよく降る。冷たい雨が降る中、出かける気にあまりならずに、暖炉のある暖かい家で過ごす時間がかなり長くなってきた。また、よくこんなに寝れるなと自分でも感心するほどよく寝る。まるで半冬眠状態だ。


Sarlat

Sarlat は有史以前の壁画がある洞窟にとても便利な場所にあり、中世の風情を残す魅力的な町である。Sarlat の朝市の風景。この辺りはフォアグラで有名なようで、車で運転しているとフォアグラの看板をいくつも見かけた。また、ここで買った鴨肉がとてもおいしかった。

Castelnaud

Dordogne 川の崖の上に立つ Castelnaud 城は12世紀から16世紀に使われていた。塔の上からの眺めは良いが、展示は中世の武器やよろい等のみなので、興味のない私達にはあまりおもしろくなかった。

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